洞爺湖の呼称・名称における一考察


「洞爺湖」は、本当に「とうやこ」なのか?


PCで「トーヤコ」と入力し、変換しても決して「洞爺湖」と変換してはくれない。
そこで、「とうやこ」と入力して変換すると、みごとに「洞爺湖」と変換される。
さらに、ネット辞書で洞爺湖を引くと「とうやこ」と、ふりがながふられている。
単純に検索サイトで検索をしてみると、「とーやこ」では「洞爺湖」関連サイトは
ほとんどヒットしないが、「とうやこ」だとみごとにヒットするのさ。
やはり、「洞爺湖」は「とうやこ」なのか?「とうやこ」が正しいのだろうか?
結論は、「洞爺湖」を「とうやこ」と読むことは、間違いなく正しいと思われる。

しかしどうだろう?アルファベット表記の洞爺湖は「Touyako」でも「Lake Touya」
でもなく、私の知る限りのすべてが「Toyako」であり、「Lake Toya」なのだ。
洞爺湖町の公式ウェブサイトを見ても、洞爺湖町を「Town of Toyako」と表記して
あるではないかい。
それなら「u」は、どこへ行ってしまったのだろう?と、私は素朴に思うのさ。

「洞爺」も、「とうや」で正しいのか?

上記のことから、「洞爺」を「とうや」と読むことには間違いが無いと思われるが、
本当に、この地は「とうや」で正しいのだろうか?本当に「とうや」で?
と、これもまた、私は素朴に思うのさ。
なにしろ、アルファベット表記は、絶対的に「Toya」なのだから。

地名について

古く、洞爺湖はアイヌ語で「キムント」または「キムントー」と呼ばれていたらしい。
「山の湖」と言うほどの意味だそうだ。
これが和人によって「洞爺湖」と呼ばれるようになった経緯は、「洞爺湖の伝説」
第三部「人間の世界」で書いた。(ただし、根拠の無い、私の妄想ではある!)

アメリカ人は、アメリカ大陸の地名をネイティブの名付けた地名で呼ぶことをせず、
ことごとくを自分たちの故地や新たな名前をつけた。が、その反省からハワイ諸島
の地名についてはネイティブの地名を変えることはしなかったと言われ、その地名
が今でも普通に使われているのは、周知の通りさ。
(一部、オアフ島には英語の地名が存在するが、どちらかと言えば例外的である)
ハワイ語の地名が、いかに自然やその土地の特徴を現しているかを、ハワイ語の
辞書を片手に見て歩き、納得していた私だけに、言葉・音にこだわりたいのさ!

アイヌ語は和人にとって外来語であると考るべきで、表音表記=カタカナ表記を
することが、本来のネイティブの言葉・音に近いのだろうと考えられる。
アイヌモシリ(人間の大地=北海道)をハワイ諸島と置き換えると分かり易いと思
われるが、明治政府がネイティブの地名を基本的に変えずに利用した事は、評価
するんだ。
しかし残念なことは、表音文字のカタカナではなく、無理に表意文字である漢字に
置き換えてしまったことさ。
(但し、今でこそ外来語の表記に用いられるカタカナであるが、当時は話言葉の
表記のために使用されていた経緯があるので、止むを得ない事情だと思う)
せめて、万葉仮名の程度に使用しておいて貰えればな...と。
万葉仮名は一音に一字づつ当てているので、表音だからね。

時の経過と共に、元のネイティブの言葉・音が失われ、漢字の音が先に立つと言う
現象が起きてしまったのだ。「シリへシ」を「後方羊蹄」と表記して、誰が読める?
結局は「シリヘシ」の名を捨て、「後方」の文字も捨てて、今は「羊蹄=ヨウテイ」に
なってしまったんでないかい・・・
「洞爺」だって、いつの間にか「ドウヤ」と呼ぶ人が出て来ている現状があるのだし。

例えば、ハワイの観光名所でもある「ダイアモンドヘッド」が、「カイマナ・ヒラ」と
呼ばれることをご存知の方も多いと思われるが、このクレーターは、ネイティブの
言葉では「レアヒ=火の渦」と呼ばれていたのさ。
やがて、その形状から英語でダイアモンド・ヘッドと呼ばれるようになり、それを
改めてハワイ語風に発音したものが「カイマナ・ヒラ」なのさ。
であるから「カイマナ・ヒラ」は、ハワイ語でありながら本来の音・意味どころか、
ハワイ語としての意味すら持たないという言葉なのさ。

この「湖」は、正しくは何と呼ばれるべきなのだろうか?

簡単に言えば、「洞爺」とは「トーヤ」という音への当て字であり、「トウヤ」とは
「洞爺」の読み方でしかなく、元の「トーヤ=湖の岸」の意味を表してはいない。
要するに、「カイマナ・ヒラ」と同様、「トウヤ」にはアイヌ語はもちろん、日本語と
しての意味すら持ってはいないのさ。
だからこそ「トウヤ」では無く、元元の言葉・音である「トーヤ」にこだわりたい。

もっとも、こだわるのならアイヌ語の「キムントー」であるべきだろうと言われる
かも知れないが、残念ながら、これには知名度が無さ過ぎるので断念。
変わってこれを北夢人(キムント)と表記し、私がハンドルネームとして使用させ
て頂いているから、そこんところは、どうかひとつ。

トーヤ」は絶滅危惧種なのか?

長く「トーヤ」と呼ばれていたところに日本人が「洞爺」と字を当てて表記したが、
その発音は依然として「トーヤ」であったことは、私が洞爺村に生を受け、成長
する過程において、誰もが「トーヤ」と発音し、「トウヤ」と発音することが皆無
であったことから明らかであり、故にアルファベットでもそう表記されているさ。
ではなぜ、いつから「トウヤ」が混じるようになったのか?その答えは、最初に
書いた『「洞爺湖」は、本当に「とうやこ」なのか?』の中にあると思われる。
そう、パソコンやワードプロセッサーでの漢字変換である。今から30年ほど前、
文書作成機(ワードプロセッサー)なるものが発売された。
当時のワードプロセッサーはメモリーも十分ではなく、またハードウエア以上に
ソフトウェアーが貧弱であり、辞書機能などはあっても日本語の辞書としてさえ
実用に耐える代ものでは無かった。今でこそ辞書機能も充実し、AI機能でずい
ぶんと便利にはなったとはいえ、やはり十分ではないのさ。
しかしこれは不幸なことだ。やがて遠からず、「トーヤ」が「トウヤ」に取って代わ
られる時が来るのかもしれない。「トーヤ」が滅び、「とうや」が当たり前になった
時、たかが文書作製機に、「トーヤ」の、先人の、私の、私たちの歴史と文化が
殺されてしまうのさ。


このことは、URLを見ていてつくづく思うことがある。「ん」の入っている場合に
「nn」と表記されていることがあるからだ。例えば、○○運輸のウェブサイトの
URLが http://www.○○unnyu.com と言う具合。それじゃ「うんにゅ」だろ!
これを見ると、完全に文書作成機に使われているな・・・と、滅入ってしまう。

余談(おまけ)

余談ではあるが、以前、ハワイへ行く飛行機の中で、フラ教室を開いているという
年配の女性と隣り合わせたとき、「[カイマナ・ヒラ]とは、どんな意味なのかを
知っていますか?」と聞かれたことがある。
[ダイアモンド・ヘッド]をハワイ語風に発音したものですよ。と答えたら、「えっ」と
言って、ずいぶん怪訝そうな顔をされた。「本当にそうなのか」と、念を押された
のだけど、それが事実なのだから、まあ、仕方が無い。
それとも、「[Kai]は[海]、[Mana]は[霊的な力]で、[ヒラ]という名の海の化け
物の伝説にちなむのです!」とでも言ってあげればよかったかな?
確かに[ココ・ヘッド]には、[koko=血]にまつわる伝説があるのだから・・・

最後に

ワードプロセッサーにおいても「トーヤ」と入力すれば「洞爺」と正しく表示のされ
る時の来ることを、「洞爺=Toya=トーヤ」の、三位一体とならんことを!

このページでは、Hawaiian Crazy Party の本領発揮だな〜!
 

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